細胞は生きすぎてはいけない
その1
「本来死ぬべき細胞」とはとても残酷ないい方かもしれませんが、細胞がしかるべき場所でしかるべきタイミングで死ぬことが、生命現象にとって大切であるということが最近わかってきました。
例えば、オタマジャクシがカエルになる時に尾が失われるのは、尾の細胞が適切なタイミングで死んでいくからです。
あるいは私たちの手ができる時も、初めは丸い肉の塊りの中に指の骨が作られているのですが、やがて指の骨の間の細胞が死んでいくことで五本の指が作りだされるのです。
免疫細胞が「自己」に対して起こらないのも「自己」に反応しそうな未熟T細胞がごっそり死んでいくからなのでした。
これらの細胞死は酸欠や細胞毒によって死んでいく細胞死ではなくて、細胞の中にみずから具えているタンパク質を発動させて死ぬ細胞死で、プログラムされた細胞死あるいはアポトーシスといいます。生きてゆくための生命現象として細胞の死、それはなんという逆説でしょうか。