中医火神派医案新選 その11
中医火神派医案新選
その11 11.臓寒癃脹――肉桂生姜湯/ 白通湯加味/ 四逆湯合金剛丸加味 李某、男、40歳。腰痛や小便急脹、夜の睡眠不安などに閉鎖・理学療法等を久しく続けるが治らない。その脈を診ると沈・弦、舌は青滑。この証は腰痛兼小便急脹で腎陽の大虚が顕か、肝気下陥の結果である。肝は疏泄を主どり、腎は閉蔵を主どる。治法は心陽を大温し暖腎温肝するのが適応し、方は肉桂生姜湯を用いる: 肉桂9g、生姜30g。 上方の肉桂一味について黄坤載は謂っている:“味は甘辛、芳しい香りがして性は温、足の厥陰肝経に入り温肝暖血・破瘀消癥し、腰腿の寒湿や腹の脹痛を駆逐する。”張錫純も肉桂について謂っている“性はよく下まで達し丹田を暖め、元陽を壮大にして相火を補う。その色は紫赤で、またよく君火を補助して血脈を温通し、全身を巡る血脈の寒に因る痺れを治す、故に関節腰肢の疼痛を治す。”これに因って余は証に臨むごとに、肉桂の強心や暖腎温肝さらに肝木の下陥を升提させるのに用いた。生姜の辛温について黄氏は“肺胃に入り濁を駆除し、肝脾の行滞を動かす”、“臓腑を調和し営衛を宣達する”と謂っている。二薬を配伍し心陽を温扶するばかりでなく、更によく暖腎温肝する。 上方1剤服用しすぐに腰痛の軽減を覚え、小便急脹も減り睡眠もまた比較的安定した。いま一歩陰陽交通を以って強心温腎を進めるため、方は白通湯加味を用いる: 附子60g、乾姜15g、葱白3茎、肉桂9g、茯苓15g。方中の白通湯を以って陰陽を交通させ、肉桂・茯苓を加えて肝木の下陥を升提させ、附子は肉桂と一緒になってよく強心温腎する。3剤で諸症の大半は好転した。続けて扶陽去寒以って補腎腰強化するため、四逆湯合金剛丸加味を用いる: 附子60g、乾姜9g、炙甘草6g、炒杜仲9g、肉蓯蓉9g、菟絲子9g、萆薢9g。この方四逆湯を以って元陽を扶ける、余はこの薬で腰膝を強化し腰痛を治した。10数剤を連続服用して症状は消失した。 注釈:本例の症状は比較的簡略とはいっても舌脈から陽虚、寒湿阻滞であると知るべし。この証と肝経湿熱による小便急脹とは異なる。陽虚の小便急脹は当に面色晄白或は青暗・身重畏寒・目弦嗜臥・小気懶言・手足逆冷などの症がある。治法は温陽散寒が宜しく、故に肉桂生姜湯を用いるべし。肝経湿熱に属する者は、多くは口苦咽乾が見られ胸痛や煩躁易怒、小便急脹といえどもその色は必ず黄赤で、舌苔黄膩、脈象は弦数である。治法は肝経湿熱の清熱が適していて、龍胆瀉肝湯の類を用いるべし。証型が同じでなく、治法もまた異なる。 肉桂生姜湯は戴氏がいつも用いた救心方剤に関連し、薬は簡単だが意義深い。凡そ心肺疾患は心肺陽虚、或は心陽不振が出現し、症が唇口青暗、心胸悶痛、喘息憋気、寒痰上泛が現れるものは、みなこの方を用いて治すことができる。本方はまた心肺陽虚による鼻流清涕が止まらない等の症を治す。 金剛丸の出自は劉河間の《素問病機気宜保命集》で、炒杜仲・肉蓯蓉・菟絲子・萆薢各等分の研末と、猪腰子の酒煮を一緒に搗いて丸となし、腎虚の腰痛骨痿の治療に用いる。 12.陽虚寒湿――理中湯加味/ 枳実梔子豉湯/ 姜桂苓半湯 胡某、男、51歳。悪寒発熱に因って食欲不振となり、発汗薬を服用後もまだ熱が退かない。某中医師は暑熱であると判断し、山梔子・滑石・黄芩・黄連の類を用いたところ、服用後に瘧に似た寒熱となった。西洋薬に改め用い瘧の針治療をしたが、四肢はだるく無力で手足厥冷し、眼はぼんやりして夜通し寝られない:また方を改め麦門冬・黄連・黄耆・厚朴・瓜蔞殻・枳殻・石菖蒲等の薬を投じたところ、嘔逆が止まらない症や頭目眩運、心神恍惚、更には肘膝から先の手足厥冷が現れた。すでに4日間も大便がなく、病も半月になって病勢は危機に瀕していた。来診時には上記症状以外に、顔色は血の気が無く両目は虚ろで、舌心が黒く乾燥して脈は沈細微であった。これはすなわち寒湿不化で元気が収まらなくなっている。それだから嘔逆が止まらず神気が困頓として見える、ただ恐れるのは元気の虚脱と救う者がいないことである。急ぎ下方を用いる: 公丁香4g、肉桂6g、柿蔕5g、蘇条参15g、白朮9g、乾姜12g、法半夏9g、茯苓15g、砂仁6g、甘草6g。この方はすなわち理中湯の加味方である。病が既に半月にもなり薬石乱投により、中陽が大虚してしまい嘔逆が止まらなくなった、これは胃気が絶えんとしている症候である。先天と後天の本は気脈が通じていて、胃気が絶えれば腎気もまた敗れさる。中焦虚寒に理中湯を以って立法する:乾姜・白朮は中宮の陽を温運し、蘇条参・甘草の甘緩で脾を益する。この組み合わせの如く剛柔相済の妙がある;公丁香・肉桂を加え以って温中降逆;柿蔕の苦温は気を下す;半夏の辛温は化痰。四薬を合わせ用いれば更に降逆の効果が顕著になる。茯苓は健脾利湿、砂仁は扶気調中。諸薬と理中湯を相配すれば、去痰しても気を消耗せず、また降逆にも気を滞らせない。 服薬後晩の8時になって、嘔逆の軽減と突然に腹痛し黒色の糞便を甚だ多く下し、夜半になって嘔逆は全て止んだ。翌日来診、四肢倦怠と体に力が入らず、胸悶、脈滑大に転じ舌は膩で乾。これは胃濁が不化なので、前方に附子60gを加え以って命門の火を助ける。これは所謂“火の源を益するは、陰翳を消すを以って”ということで、理中湯を合わせすなわち先天後天の陽をどちらも一緒に扶けが得られ、そして胃濁は自ら降りるのである。 服用後胸悶は全て消え精神状態は良好に転じたが、まだ心煩と不安、頬の腫れと歯茎の隠痛を覚えた。枳実梔子豉湯加蘇条参を以って処理する: 炒枳実6g、焦梔子9g、淡豆豉9g、蘇条参15g。枳実梔子豉湯は仲景の寛中下気や心腎交通・虚煩除去の方であり、これに蘇条参を加え以って元気の保護とする。服用後心煩は大いに減ったがまだ頬の腫れや歯の痛みが全て消えた訳ではないので、自製方の姜桂苓半湯加減を用いる: 乾姜12g、桂枝12g、茯苓15g、胆炒半夏9g。方中の乾姜を以って除寒散結し、桂枝は温経通脈、茯苓は利水行痰、半夏の胆汁炒で更に化痰降逆し、浮越した陰火を潜蔵することで引くことができる。 方を1剤服用し頬の腫れは消え歯の痛みは止んだが、夜が明けた時に両腿の疼痛と水腫、舌の白膩が現れた。これは上方の散寒降逆に因って、寒が下に向かったために腿の水腫が現れたので、きっと寒湿が取りきれておらず陽が宣達しないためである。続けて以下の方を処方する: 麻黄6g、杏仁9g、桂枝9g、白朮15g、薏以仁15g、甘草6g。この方は麻黄加朮湯と麻杏薏甘湯の合方である。蘊積した寒湿を尿・汗として取り除く妙方で、服用後直ぐに腿痛は減り水腫は消えてなくなった。続けて苓桂朮甘湯加附子及び四逆湯加苓・朮を調理して癒えた。 注釈:この病は最初薬物の乱用によって変症を誘導し、脾腎を傷つけ嘔逆不止が現れ、本当に陽虚・寒湿不化の証に繋がってしまった。舌色黒そして乾に至っていよいよ陽虚で津液上承不能となり、同時に熱象ではなくなった。陽虚がすなわち病の本で、寒湿がすなわち病の標である。初めから終わりまでこの用薬の鍵をしっかりつかみ、無論その陰邪の上越が牙歯疼痛や頬の腫れを引き起こし、下泄が腿腫痺痛となり、症状が異なるといえども病の本源は同一なり。陽気を扶け寒湿を取り除くことから出発すれば、一歩一歩栄光に近づき終には全て成功を収めることができる。 続く
by sinsendou
| 2012-06-11 00:31
| 中医火神派医案新選①~
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