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中医火神派医案新選 その7

中医火神派医案新選
その7

 2.胃痛――四逆湯/ 潜陽丹加肉桂
  李某、男、34歳。胃脘疼痛に因って発作を繰り返し、大便色は黒で某医院に入院し“胃潰瘍”と診断された。治療2カ月余りを経て輸血2,000mlするも病情は好転せず。症状は胃痛腹脹のほか噯気・反酸、畏寒肢冷、声低息短、少気懶言、面色青暗、舌質青滑、脈沈。証は腎陽大虚に属し、陰寒が凝滞して気機不暢となっている。治法は扶陽抑陰、回陽去寒に宜しい。方は四逆湯を用いる:
  附子60g、乾姜15g、甘草6g。この方は専ら駆散陰邪を以って峻扶元陽する。
  鄭欽安の説: “凡そ人の一身は全て一塊の真火(即ち元陽・真陽・腎陽)に頼っている、真火がまさに絶えんとすると、病は純陰が現れる。”“四逆湯の一方はすなわち回陽の主方なり……既に回陽ができる、すなわち凡そ世の一切の陽虚陰盛は病となり、みな服用することができるなり。”故に余は臨証では、毎回陰寒の重症に遇う毎にいずれもこの方を投与し度々適応し効果を得る。
  2剤服用し胃痛は大きく減り、精神は好転し大便の色は淡に転じ、腹脹も僅かに感じるほどとなる。再び原方に肉桂9g、砂仁6gを加えるが、この二味薬は陰証の開窮薬であり温胃散寒並びに昇降気機の力を具えている。2剤服用し各症は漸減する。潜陽丹加肉桂に改めて用いる:
  附子60g、砂仁6g、亀板15g、甘草6g、肉桂9g。この方は納気帰腎の妙がある。方中の砂仁は辛温でよく脾胃の寒邪を散じかつ納気帰腎の効果がある;亀板は鹹平で滋陰潜陽、補血止血する;附子は辛熱でよく腎中の真陽を補い亀板とともによく陰陽両補する;肉桂は辛甘大熱で腎陽を補い脾胃を温め、積冷を除き血脈を通し、附子と配してよく温腎強心でき、砂仁と配して温胃散寒できる;また甘草の甘で補中を以って、先天後天のどちらも陰陽の両方を補う。
  2剤服用して大便・顔色は黄色に転じたが、ただ僅かに腹痛を感じるので前方に炒呉茱茰6gを加えて温中止痛とする。2剤服用を云いつけ諸症状は消失した。

  評注:本例胃痛は病変部が胃脘にあるといえども、一緒に全身の虚寒が見られ弁証は腎陽虧虚が主であるので、四逆湯を以って回陽去寒して治癒。臨証の際には必ず病機を詳細に知って、痛み止めだけにならぬように努めて避ける。この老師は鄭欽安の理論を引用し、その後鄭氏の名方潜陽丹を借用している真の火神派伝人なり。

  3.発熱咳喘――四逆湯加味/ 桂枝加附子湯
  金某、男、生後2カ月の嬰児。素体が羸弱で発熱・咳嗽に因って診断は小児肺炎であり、かつて西薬の解熱剤等を服用したが病情は危険に転じた。来診時の症状は神迷・発熱、目は閉じたままで顔色は青く、唇の色は淡白。喉の間からは痰鳴がして咳嗽気喘し、冷や汗が滴っている。舌淡潤、苔薄白、脈沈小そして緊。この患者は元々素体が不足していて元陽も稚弱なところに急な寒邪の外侵を感じ、また薬物に因って傷つけられ遂には濁陰の上逆になって中陽が守られなくなった。もし元陽の援けを急ぎ直ぐに濁陰を追い払わなければ、将にその勢いで元気暴脱の危険症候が出現しかねない、急いで四逆湯加味を用いる:
  附子15g、乾姜5g、桂枝5g、茯苓9g、炙南星5g、炙甘草3g。四逆湯は回陽救逆し脾腎の陽を温め、加えて桂枝は心肺の陽気を宣通し、茯苓は建脾利湿と和中し、炙南星は風痰を除く。
  翌日発熱は軽くなって冷や汗もすでに収まり、顔色は紅潤に変わり目も開いて神清となった。喉の間の痰鳴も消えて危機的症状は全て除かれた。続けて桂枝加附子湯を用いる:
  附子15g、桂枝5g、炒杭白朮5g、炙甘草3g、焼生姜3片、大棗2枚。連続して2剤服用し諸症状は消失した。

  注釈:この証は外感を感受して陽虚に繋がったといえども麻黄附子細辛湯を使用しなかった、これは患者が冷や汗淋漓が止まらずすでに陽気欲脱の象となっていたので、麻黄の辛の発散を用いず、急いで四逆散の回陽救逆を以って寒疾を駆逐することが不可欠で、患者の元陽を扶けることで危機的症状を消し去ったのである。続けて桂枝加附子湯を用い扶陽和陰を以って営衛を調和し治療効果を強固にした。

  4.舌痛――四逆湯
  李某、男、30歳。舌尖疼痛がなかなか治らず既に2カ月、前医は黄連解毒湯等を用いたがまだ効果がない。その舌を診察すると滑潤津液多く舌尖は紅くない、口も渇かず心煩もない、脈沈無力、陰証は明かである。舌は心の苗なのでもし陽証に属すならば、当に心煩・舌紅・咽乾・嗜水・脈数等の象が見られるはずである。今の所見はみな不足の証に属し黄連解毒湯の実を用いれば“以寒治寒”となり、徒に自ら胃気を耗傷させる。因ってこの脈象には改めて四逆湯を用い峻扶元陽する:
  附子60g、炙甘草6g、乾姜6g。服用後舌尖の疼痛は大幅に改善され、続けて2剤服用し直ぐに癒えた。                                      

続く

by sinsendou | 2012-05-18 00:00 | 中医火神派医案新選①~
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