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中医火神派 李可老中医医案翻訳 その50

李老中医 危急重症難病治療経験
その50

九、急性胆道回虫症と急性膵腺炎併発

  水頭劉守財の妻46歳、1983年12月2日救急入院し、内科・外科の緊急処理を経て制御できずに中医診察を要請された。
  患者は昨日朝食後右上腹部の絞痛と頻繁なる嘔吐があり、午後4時には1条の回虫を吐出し激痛部位が右上腹部にまで拡大して、疼痛は激烈となり一度は納まったもののドレンティンを1本注射したが効果なかった。今日は持続性・陣発性の絞痛が更に激しく、腹全体を触られるのを拒み手も近づけることができず、反って痛みで飛び上がり寒熱は虐のようで体温は39℃、血液検査では白血球185001/ml、中性球90%、初期診断は急性胆道回虫症と急性膵腺炎合併症である。すでに多量のペニシリン静脈注射を与えていたが、熱は退かず激痛や嘔吐も止まらない。当時本院には血清を作り澱粉酵素測定することができなかったが、もうすでに急性膵腺炎の三大症状が現れており病勢は大変重く危険で、もしも転院となったらすなわち病勢は遅延し病機を誤る、そこで中西医結合で進めることを決定し急いで救急する。
  訊いて判ったことは患者は肥甘酒酪を嗜食したため湿熱が内蘊し、脈は沈弦数実、舌苔黄厚燥、口苦・口臭がある。最近食滞が続き7日間も通じがなく、それに加えて回虫が内擾して胆道に侵入し膵腺炎を発症した。脾胃肝胆に邪熱が壅阻し、すでに実熱が胸に結実して陽明腑実の重症となっているので、以下のように処方を決める:
  1.舌下の金津・玉液穴を刺して黒血を瀉血し、両尺澤穴から黒血2mlを抽出、左足三里、右陽陵泉から陰陵泉へ挿捻転瀉法と留針30分を施す。
  以上は胆胃の瘀熱を疏瀉し痛みを止める方法で、施針後に嘔吐は止まり激痛も緩解した。
2.攻毒承気湯合大柴胡湯・大黄牡丹皮湯・烏梅丸を加減し、清熱解毒、通腑瀉熱によって血毒を完全に消滅させる:
  柴胡125g、黄芩45g、生半夏60g、杭白芍45g、枳実・牡丹皮・大黄(酒に浸した後で入れる)・生大白・甘草各30g、桃仁泥15g、冬瓜仁60g、烏梅30g、川椒・黄連殻10g、細辛15g、二花90g、連翹45g、芙蓉叶30g、芒硝40g(分冲)、鮮生姜75g(切)、大棗12枚。
  2000mlの水を加えて1時間浸した後、強火で10分煮沸し煮汁600mlを取り芒硝を入れて溶かし、さらに蜂蜜60g、生姜汁10mlを加えたものを3回に分け、3時間に1回の割で日夜連続して2剤服用することで病勢を阻断する。
  12月3日二回目の診察:昨日11時40分から服薬を開始し12時半には腹中がゴロゴロ鳴って頻繁に放屁を繰り返し、吐き気は止まり痛みも7~8割なくなったがまだ便意はない。そこで余が2回目の薬汁を一緒に服するように命じたところ、午後2時40分になって、羊の糞球の様な便器一杯の大便及び蛔虫3条を含んだ極めて熱くて臭い黒便を瀉下し、痛みは全て止んで熱も退いた。第2剤の薬から芒硝を除き夜の12時前までに、3回に分けて服用し終わるように言いつけた。夜の10時になって2度目の1塊の蛔虫を瀉下すると、一晩安眠した。
  今日の血液検査ではすでに異常はなく、熱は退き痛みも止んだので患者は退院を希望した。脈はまだ滑数なので上方の1/4量を2剤持たせて余邪を清くする。

  注釈:現代医学の称するところの胆道系統疾病(胆蛔症・急性胆嚢炎・胆石症)及び膵腺急性炎症が、出現したときの症状は胸脇激痛や手を近づけさせないとか、嘔吐が止まらず寒戦高熱などで、《金匱》蛔厥・《傷寒》“熱実結胸”“結胸発黄”・大陥胸湯証・大柴胡湯証などの記述に基本は合致する。故に大柴胡湯を以って核心組方とするのは正に最も良い方案である。急性膵腺炎6例の治療を経て、急性胆嚢炎・胆石症・胆絞痛(金銭草120g、鶏内金・郁金角30gを加える)など70数例みな癒える。本例は合併胆道蛔虫症で、故に烏梅・川椒・黄連・細辛・蜂蜜を加え引となし、30分後に芒硝20gを以って瀉下させ、1剤で取り除いた。
針刺と放血は止痛・止嘔・解熱の方面で病勢を直ちに止める効果をあげたし、弁証をして用いた薬が障害をきれいに取り除いた。
  凡そ経方を用いて大病を治すとき、一に必要なことは弁証が当を得ていて、病機を見て直ぐに投薬し躊躇しないこと。二に必要なことはよく経方の基礎である有効剤量を掌握し、一回に必要量を用いる、それは多量で頻繁や日夜連続服用など、病勢を阻断でき危機存亡から救い解放できねばならない。余の考えでは原方の半分を以って計量の基準とする、この点は既に80年代後に考古発現した漢代度量衡制が実証したものである。即ち漢代の一両は現代の15.625gにあたると、上海の柯雪帆教授がすでに明らかに著しているし、並びに臨床験証を経て真実であると信じることができる。この量を以って重度の危急症を治療して、一剤で収めることができることを知り二剤で終わるように、攻める毎に勝つという奇効がある。この量が少なければ無効か或いは緩慢で危いところを助けられず、そればかりか病機の誤りを残し人の生命さえも誤りかねない!中医史上を回顧し、明代から医界で流行した“昔の一両はすなわち今の一銭”の説が、数百年来すでに定律となっている。練習用の軽剤はもとより落ち着いた態度でするのはよいが、ただかえって去精したようなのが仲景学術の一大特色である。踏襲が今になって遂に中医をして優勢変わり劣勢となり、急症の陣地を失ってしまった。ただこの一つの悪習を除き過ちから抜け出し、急いで起き上がりまっしぐらに追いかけ、経方の奥秘宝蔵を発掘努力し、実践して足場を固め、一定の胆力と見識を有して大病を治すことができ、また単独で一部の責務を担うことのできるだけの青年中医隊を養成することが、当に中医を復興させる当面の急務である。

十、胃結石症

  霊石石膏工場工員孫宝祥、48歳。1997年中秋節前に狩りをしに山へ登ったがなにも獲物を取ることができなかった。また喉が乾き空腹だったので、成熟した黒棗を見つけ一度に腹いっぱい約1kg以上を食べ、その上冷たい山の湧水を飲んだ。家に帰り疲労が極まり倒れるようにして爆睡した。夜半になって胃痛と脹悶で眼が覚めたが、その痛みは絞られるようでこの日一日甚だしかった。たまに食物を口にしても直ぐに吐き脹痛は耐えられないほどとなった。病が延び延びとなり二カ月して、雲を突くような威丈夫だったのが終に両頬はこけ骨は柴のように痩せて、体重も急に10kg以上減り寝込んで半月も起き上がれなかった。県医院でのX線検査では胃の中にたくさんの大小不揃いな欠損が充満しているのが見えたが、淵に沿ってはきれいであった。総合臨床診断は“胃黒棗結石”で摘出手術と決まった。しかし家族は同意せず余に診察を依頼した。11月20日脈診は沈滑有力で舌苔黄燥。胃部を按診すると小児の拳大や桃の種ほどの大きさの円形で包まれた塊がころころ転がっていた。患者は素が牛の様に壮健だったが、病によって虚となり本当にげっそりと痩せてしまった。当に積を消しながら堅を攻め同時に正虚にも注意する。まず保和丸で消食化積するが、莱菔子一薬は“壁を押して倒す効果がある”、鶏内金はよく消食化石する主薬であり、この二薬で利気止痛と消脹寛中してしかも正を傷つけず、莱菔子と紅参・霊脂とを一緒に用いれば相制相畏で積を攻め正を扶けるし相互に徳益が明らかで、遂にこの一方と定める:
  莱菔子60g(生炒各半)、鶏内金30g、連翹30g、枳実・大黄(酒浸後下)・焦三仙15g、生半夏・雲苓各30g、紅参(別に弱火でゆっくり煎じる)・霊脂・陳皮・木香(後下)・炙甘草各10g、鮮生姜10片。
上薬を3剤連続して服用し、毎日1~3回丸い塊の粘液で包まれた大便を瀉下し3日後には全快した。
                                     一旦終了

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by sinsendou | 2012-03-29 11:52 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その49

李老中医 危急重症難病治療経験
その49

七、胆石症の絞痛

  公安局幹部景宏元、45歳、1985年8月17日夜来診。患者は強烈な右肋骨痛が3日、県医院の超音波診断は胆結石で、胆嚢内には大小不揃いな結石が6個、大きいものではトウモロコシ粒、小さいものでは小豆の如くであった。すでに手術が決まってはいたが、本人は先ず中薬の服用を要望した。直ぐに患者を診察すると正に激しい痛みと便は結して腹脹し、頻繁なる排尿の度に痛んだ。先ず針を刺すを以って胆経欝火を清瀉するため、陽陵泉から陰陵泉まで行瀉法を施すと約10分で激痛は緩解した。
  患者は平素から酒を嗜みまた甘く肥るものを好食し、脈滑数、舌苔黄厚、証は湿熱積久化火に属し、胆石が胆道を阻滞しているので清熱利胆を与え排石する:
  柴胡25g、白芍45g、赤芍30g、枳実・郁金・滑石・海金砂・大黄各30g、黄連・山梔子・木香各10g、桃仁泥・甘草各15g、川牛膝30g、乳香3g、鶏内金10g、醋元胡5gを研磨し粉にして冲服、芒硝15g(分冲)、大葉金銭草120g。
  これらを煎じて600mlを取り、朝晩に分けて3剤を服用。
  8月21日二回目の診察:上方を服用後毎日膠粘な灼熱性の大便を2~3回瀉下して痛みは止まった。芒硝を去り大黄を10gに減らし続けて3剤服用。
  8月25日三回目の診察:合計6剤を服用後再び超音波検査を行うと、結石は泥砂状と化した。食欲精神共に正常人の如くになった。毎日鶏内金粉21gの服用を云いつけ、また金銭草60gを煎じて一日3回服用し10剤で全快した。1997年に追訪したが一切変わりがなかった。

  注釈:急性胆嚢炎及び胆石症の絞痛発作は疼痛が強烈で、陽陵泉は胆経下の合穴であり止痛効果は極めて良好である。或いは复方冬眠霊1本を穴位に注射してもその効果はまたいい。余は上の針薬併施を以って数十例の急性胆嚢を治療したが、どれも一回で治り再発もない。胆石症のあるものは徹底排除ができるが、まだなお結石が残るときも泥砂状に溶解し徐々に排除される。但し治療によって臨床症状は消失し手術は全て免除となった。

八、胆道回虫症

  閂引弟、女、45歳、水頭村二隊社員。1977年4月9日余が城関衛生院に任職時に急患として入院。右上腹部絞痛が1週間、県医院内科では胆結石を疑い、省医院へ転院して手術を具申した。患者を診察すると顔色は灰暗、冷や汗が滴り嘔吐止まず右脇の激痛7日、1日に4~5回の発作がある。発作時には寝床を転げ回り呻き声が絶えず、間歇時でも隠痛が休みなく続く。四肢厥逆し脈伏、舌苔黒膩。両頬には丸い白斑があり;両鞏膜の下端には蘭色の条状紋を見ることができ、先端は火柴頭のようである;下唇の内側には白疹が満布している。上の三点は虫症の特徴であり、寒熱錯雑型の蛔厥症と判断して治療する:
  附子15g、呉茱茰・川黄連・乾姜・枳実・細辛・川椒・生大黄・木香各10g、烏梅・代赭石粉・苦楝根皮・党参・炙甘草各30g、芒硝15g(分冲)、生姜汁30ml、蜂蜜120g。
  上薬を煎じた濃汁600mlに、蜂蜜を入れ煎じよく沸騰させそれに生姜汁を混ぜあわせ、2回に分けて3時間毎に1回服用し、服薬後30分したら芒硝を服す。
  上薬を1回服用後腹痛嘔吐ともに止まり、7日目にして初めて安らかに寝られた。夜半に目を覚まし2回目の薬を服用し、芒硝も冲服した。10日の早朝5時に回虫を吐出し、6条の回虫を瀉下したので10日の午後には原方3剤を携えて退院した。ただ原方から硝黄・代赭石を去り使君子仁20gを加え二度煎じよく混ぜ合わせ、毎朝空腹時に先ず使君子仁を食べてから蜂蜜水を1杯飲み、頓服にて湯液を服用する。毎日いつも回虫の排泄がありその症はついに癒えた。
  古人が謂うには、回虫は“酸を得ればすなわち隠れ、苦を得ればすなわち安らか”なりと。余が胆道回虫を治す時は必ず蜂蜜及び生姜汁を加え、その“甘を得ればすなわち喜なり、辛を得ればすなわち散なり”を採用する。烏梅は明らかに痙攣を緩解させる作用がある。歯を硬く閉じている様な時に烏梅を擦りつけることでたちまちにして解ける。更に現代薬理学研究においても、烏梅は胆嚢を絶え間なく収縮させることや胆汁分泌促進ができ、胆道に潜り込んだ虫体を退出させることができる。
                                       続く

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by sinsendou | 2012-03-10 11:31 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その48

李老中医 危急重症難病治療経験
その48

五、急性子宮内膜炎

  郭玉梅、女、31歳、炭鉱工夫の家族。1967年10月9日急診。患者は月経が終わった翌日に公衆浴場へ入浴し、その夜に少腹に針で刺されるような脹痛を感じ、汚臭のする灼熱の帯下と腰痛がして、夜半には悪寒戦慄が始まり体温も39.5℃の高熱になったので自分で鎮痛片の四環素6片服用後汗をかいたので寝た。今朝起床後も頭痛と吐き気がし体温もまた39.7℃に戻った。炭鉱医院はペニシリン注射80万単位10本とアンナイジン2本を打って楽になった。しかし12時には破れんばかりの頭痛と噴射状の嘔吐が起き高熱も40℃に達した。黄色汚臭の帯下もさらに多くなって血も混ざり、少腹の絞痛で近寄ることもできず意識は混迷し、歯を食いしばり時々引きつけも起こした。脈滑数、舌苔黄厚膩、口中から悪臭あり。炭鉱医院の診断は子宮内膜炎と盆腔膿腫で、すでに膿毒敗血症にまで発展しているとした。症状は重く甚だ危険で一刻も早い県医院へ緊急配送の意見を出したが、患者の夫の劉守珍は中薬治療を頑なに変えなかった。そこでまず三稜針を以って重刺して出血させ、両尺澤から黒血10mlを抽取し、針で素髎・合谷に瀉方を施すと患者は全身から発汗し息を吹き返し嘔吐も止んだ。そこで書簡は方案を求めていた:症は月経の後の入浴で、汚濁で不潔な物が前陰から侵入しそれが湿熱となり毒と化し、胞宮血室に結び熱極動風となって、神明を上犯した。攻毒承気湯で熱毒を完全に消し去り病勢を止め危急を挽回する:
  二花240g、芙蓉叶・連翹・生大黄・柴胡・生薏以仁各30g、蒼朮・黄柏・蚤休・牡丹皮・紫草・桃仁各15g、冬瓜仁60g、漏芦12g、炮甲珠・甘草・車前子各10g(包)、川楝子30g、醋元胡6g(研磨粉冲服)、芒硝30g(別包)、白酒100g、これらを1時間冷水に浸した後強火で10分煎沸し、出来た汁3,000mlを1回300mlずつ2~3時間毎に服用、同時に冲化芒硝10gと元胡粉1.5gを服用し、瀉が得られれば次回からは芒硝は除き使わない。一気に昼夜分かたず時間通りに連続服用させ、以って病勢を遮断する。
  患者は夜の7時から1回目を服用し始め、8時頃には悪臭を伴う便が1回あり腹痛は止んだ。9時に続けて1回服用すると11時には体温が38.5℃に下がり黄色帯下も薄く変わった。夜半2時には体温37℃となり患者は寝入った。余は一晩観察見守り翌朝までに合計6回、1剤の2/3弱まで服用し、諸症状はすでに8~9割癒えたので余った薬は使わないので捨て去るように言いつけ、清腸飲3剤を投与した。余が9時に双泉峪を離れるため保健駅に戻ると、患者はすでに起き出て見送ることができた。患者が自ら服薬を開始し基本的に全快に至るまで12時間、薬代は10元足らずであった。余は農村の条件下で多くの危機的重症急性腹症を治療してきたが、成功を得られた経験から今まさに上方の型が定まり、その名を“攻毒承気湯”とした。30年の歴史の中で資料は散失してしまったので正確な統計を作ることは難しい。上に述べた病症以外では、急性膵腺炎・重症肺膿瘍・疑肝腫瘍・外科創傷毒血症などもみな治癒した。本方は配薬の困難な農村から始まり、1剤の薬で20時間以内に一つの大病を解決する様に設計した、故に用量が多くなった。90%以上の病人は一
剤の薬を服用し終わる前に殆ど全快する。

六、腸梗塞術後粘連性不全梗阻

  
  李増仁、男、37歳、壇鎮孫家溝農民で外科に入院中の病人。1984年1月14日外科は余に治療協力を要請した。病歴記載、患者は2年前に腸梗阻の手術をした。今年の冬至の後にまた粘連性の不全梗阻が発生しすでに入院は20日にわたり、頻繁な嘔吐や休みなく続く腹痛、大便は通じたり通じなかったりで、すでに25日も食べることができない。体は痩せ細り疲れ果て立つこともできず、動けばすぐに息切れがする。脈大で按じると散り、舌紅中根は燥乾。これは中気が虚となり運化しなくなったことで、胃液が枯れ和降を主どれないことによる。益気降逆、増液行気を与える:
  生黄耆90g、紅参20g(別に弱火でゆっくり煎じる)、生地黄30g、元参60g、麦門冬90g、厚朴30g、沈香・ 木香各5g(研磨汁を混入)、代赭石粉50g、莱菔子30g(生と炒を各半分ずつ)、生姜汁10ml混入、2剤。
  当日服薬後、腹中は雷の如く響き渡り吐き気は止んだ。正午には食事を開始し、午後2時に便通があって腹痛も止まった。次の日また1剤服用しすべて平常に回復したが、ただ息切れと体に力が入らない感じが残った。すでに退院の手続きを終わり、特に中医外来まで来て余に別れを告げた。補中益気湯加麦門冬30g、五味子10g、3剤を予後治療として与えた。

  注釈:一切の痞塞不通の症を治すに、重きは“気”を治すことにある。百病はみな気から生じ、三焦の気化昇降の枢紐は脾胃にある。故に気を治す要は、脾の升と胃の降が巡らないに過ぎない。脾が宜しく昇ればすなわち健やかになり、胃が宜しく降りればすなわち和む。もし六淫の外邪や飲食の内傷によって、脾気が下陥し胃気が上逆すればすなわち阻隔不通の病となる。甚だしければ気機は逆乱し升があっても降がなくなり、上から入らず下からも出ない格別の病となる。これがすなわち腸梗阻の成因である。格別な大病を治すには掃討攻堅の剤を用い、必ず気薬を以って帥とする。大承気湯(大黄四両、厚朴半斤、枳実五枚、芒硝三合)のように四味薬のうち気滞を破る薬が半分を占め、厚朴が大黄の二倍となっているし張氏の硝菔通結湯の二味も芒硝4両、白大根5斤となっている。白大根は野菜で四季を通じて手に入り廉価である。性は温で、生は升で熟は降、一物で升降気機の効能がありまた食療としても上品である。生で食せば咽を下げ噫気やしゃっくりに速効があり、胸を広げ気を昇らせ上焦を先に通ずる;熟で食せばすなわち放屁やゴロゴロの腸鳴、下気などを極めて速やかに二便を通利し、中下二焦を通じることができる。芒硝と白大根とは同時に煮れば堅軟潤下の作用があり、白大根の濃汁を以って気の高ぶりを落ち着かせ、腸の蠕動を加速するのが最も早いししかも正気を傷つけない、故に重症・虚症の腸梗阻には最も理想的である。
  手術後発生する腸粘連或いは不全梗阻或いは尿閉などは、さらに気虚の病となる。気虚失運はすなわち窒塞不通で当に塞因塞用、人参黄耆を多量に用いて元気を大補する。小量の木香を佐として沈香研磨汁を混入し大気の流転を助ける。莱菔子はすなわち白大根の成熟種子で白大根と同じ性をもち破気消痰の“壁を押し倒す効果あり”で、多量の人参黄耆を以って帥そして統となし、その善く通の特長を発揮し開破の弊害を制して害なさしめない。再び代赭石・厚朴を加えて胃逆を降ろし、液が枯なるものには多量の増液湯を合わせて増水させ、また三焦の気化を迅速に回復させ閉塞を突破し諸症を治癒に導く。手術後各臓器の粘連の患いを治すために用い、症によって加減すれば効果は極めて良好である。気虚の者は脹悶を感じる場合が多く、気虚下陥症になれば脹悶はさらに酷くなる。疏散ができず更に開破もできないとき、その気を峻補し気が足りればすなわち升降の運旋は正常に回復し脹悶は自然と消える。       
                                            続く

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by sinsendou | 2012-02-27 12:03 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その47

李老中医 危急重症難病治療経験
その47

四、老年の高位腸梗阻と疝嵌頓の合併症
  

  公安局李継光の叔父、65歳、城関院に入院中の病人で1983年11月3日診察。病程は8日間で、入院は2日間。レントゲン検査で剣上突起と同じ線に液体面がある;右側の睾丸腫痛を検査し、嵌頓(3日)による頻繁な嘔吐と二便閉結、さらに放屁もない。胃腸減圧・浣腸しても効果なく、手術するつもりだったが家族は中薬による治療を要求した。患者は高齢でありしかも大便不通の重症が10日も良くなっていないが、体質はまあまあである:
  1.生白大根2.5kg、芒硝120g;
  2.代赭石粉50g、旋覆花15g(包)、生半夏・厚朴各30g、枳実・木香・沈香・甘草各10g、鮮生姜30g、紅参15g(別に弱火でゆっくり煎じて混入);
  3.生山楂子30g(煎湯)、紅糖15g、白酒は1分間燃やした後火を消して、真広東省の木香を削った粉3gを穏やかに煎じ均等に混ぜ合わせて準備しておく。
  上薬の方1と方2を決められたように煎じて均等に混ぜ合わせ、できた汁800mlをまず300ml服用させ、その後2時間毎に200mlを与え吐き気が止まり、便が通じたら今度は方3を1回服用させれば疝嵌頓は癒える。
  11月4日二回目の診察:一回目を服用後吐き気は止まり、二回目を服用後には腹中がゴロゴロし始め頻繁に放屁が出たので、方3を頓服で1回加えると約15分後には便が通じた。今朝のレントゲン検査で液体面は消失し、疝嵌頓は方3を服用後20分で癒え退院した。
  11月7日李継光より夜明けに往診の依頼があった。話では退院の当日、帰り道で冷えを感じしゃっくりの発作が始まり、現在まで28時間続いて止まらないという。15分後診察すると患者の顔色は青白く、精神疲労がこらえられないようで、脈遅細60拍/分、舌胖で潤、四肢末端は冷たい。臍下から冷気により頻繁に上攻されると声は低く息は短くなる。長患いで現れるしゃっくりは危険で、これはとても風冷による小さな病気では絶対にない。一生牧羊のように内傷の積損を知るべきである。初診の診察失敗は、65歳の高齢で格別の危機的状態にあって一日中芒硝120gを服用させられたため、脾腎の元陽は大きく消耗し冲脈が下焦を守ることができなくなった。亡陽厥脱の変化があることを恐れ、急いで温腎し冲脈を安定させ厥脱しないように固摂する:
  附子30g、油桂6g(冲服)、沈香・砂仁各10g、紅参(別に弱火でゆっくり煎じて混入)、山薬30g、雲苓15g、紫石英30g、澤瀉・懐牛膝・公丁香各10g、柿蔕30g、生姜汁1杯、山茱茰肉60g。
  急いで煎じ何回も飲ませ、その日のうちに2剤を飲み終えた。
  余は病床で見守りながら大艾柱灸で神闕を30分すえ、薬を1回服用後しゃっくりは止まり、四肢は温かくなり空腹を覚え危機を脱した。生白大根と芒硝は本来正を傷つけるものではないし、ましてや紅参の扶正があれば異変があることがおかしい。農民の生活は困窮であり薬物を捨て去ることが惜しまれたため、便が通じた後も最後まで結局2回も多く服用して、危ない目に遇ったのは不測の事態である。そこで余は医師に周知しなかったことの過ちを注意した。
                                             続く

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by sinsendou | 2012-02-13 00:23 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その46

李老中医 危急重症難病治療経験
その46

二、老年性高位腸梗阻
  王万林、男、65歳、外科入院の病人。急診で入院して5日、病程は半月ほど。発病して直ぐに菔通と嘔吐が現れ半月ほど排便も放屁もない。腹は太鼓の様に脹れ時々絞痛し病床で転げまわっている。外科の診断では老年性の腸梗阻である。胃腸減圧や浣腸をしても無効で手術の準備をしている。患者は高齢で体が弱く、また脱水症状も酷く心臓機能も良くないので恐ろしく難しいことを考慮し、中医の協同治療を要請した。
  患者を診察すると焦悴しきって眼眶は落ち窪み、極度に痩せているが腹だけは鼓の様に脹れて、すでに半月米粒を食べていない。舌苔黄厚膩、脈滑無力。高齢で大病に匹敵し、邪実正虚なので峻攻には耐えられない。硝菔湯に扶正破滞の品を合わせる。
  一、生白大根5kg、芒硝240g;
  二、紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・代赭石粉・厚朴・檳榔各30g、旋覆花15g(包)、枳穀10g(炒)、木香・沈香各3g(研磨汁を混入)。
  それぞれ法にのっとり煎煮し、両汁を均等に混ぜ合わせ2時間に1回、毎回200mlを連続して服用させ便が通じれば停薬する。
  次の日診察で知ったのは、昨晩8時に1回目を服用しその15分後まず臍の周りで絞痛を感じ、続いて直ぐに気が上下にゴロゴロし腹中では雷の様な音が、皆に聞こえるくらい部屋中に響き渡った。約40分後頻繁にゲップが始まり放屁も停まらない。三焦の気機昇降はすでに回復し腹腸は大幅に減った。また薬汁200mlを服用すると、1時間後には腹中がひとしきり強く痛み、続いて直ぐに団子状の結糞に極めて臭い糊状を含んだ大便を甚だ多く下し、全快して退院した。この例は服薬から便通まで僅かに2時間10分しかかからず、服薬も全体の半分弱だった。
  

三、化膿性闌尾炎と重症の腹膜炎の合併
  水峪嘼医院楊友三の子、楊建強、14歳。1984年9月16日夜中の2時に緊急入院。確定診断は“急性化膿性闌尾炎と彌漫性腹膜炎の合併症”で白血球15900・中性球90、大量のペニシリンを投与したがコントロール不能。高熱の39.5℃が持続し退かず意識は混沌。すでに手術が決まっていたが家長が不同意。17日中医の協力を要請。上記の如くの証が現れて、恐れることは熱毒が心を攻め脳が犯される心配があることである。攻毒承気湯を加減して与え釜底抽薪し、清熱解毒で排膿する:
  二花120g、桃仁・牡丹皮・紫草各15g、生石膏30g、冬瓜仁60g、生大黄(後下)、甲珠・皂角刺・甘草各10g、蚤休15g、生薏以仁45g、芒硝24g(冲)、三七粉10g(冲)。
  上方2剤を一昼夜連続して2時間毎に1回服用させ、心地よい瀉下があれば芒硝を去る。
  9月18日二回目の診察:熱は退き闌尾の圧痛及び腹全体の激痛もすでに8~9割なくなった。処方を改め《弁証奇聞》の清腸湯を2時間に1回投与する。
  9月19日三回目の診察:腫痛は全てなくなり起き上がれるようになった。昨日の処方をもう一剤投与する。
  9月20日全快して退院、清腸湯を2剤持たせ以って余毒を清くする。
                                           続く

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by sinsendou | 2012-01-28 11:28 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その45

李老中医 危急重症難病治療経験
その45


外科急性腹症医案十則

一、闌尾膿腫合併腸梗阻
  任蘭汝、女、48歳。1964年8月14日病で死にかかり、彼女の子がある新民のある村のある家から下山して診察を頼まれる。そこで道中を急ぎ午前には村へ着いた。部屋に入ってみると、患者は右側のオンドルの上に横になり苦痛で呻きながら、頻繁に汚臭のする糞便の混ざった涎を嘔吐し、頭部からは豆粒大の汗を滴らせていた。右腿は少しも伸ばすことができずに湾曲し、闌尾部はほぼ饅頭の大きさほどの塊が隆起して、外観は紅く腫れて痛みで近づくことができない。押さえると灼熱感や波浪感がある。腹は瓶の様に脹れて絶え間なく絞痛があり、既に3日通じがなくまた放屁もできない、小便は赤熱で刺痛がする。高熱で身震いがして 歯がカタカタ鳴っている。腋下体温は39.5℃。口気は汚臭がして舌は黒く割れて乾きザラザラしている。僅かに外観から既に腸瘍が膿成されて、熱毒が三焦・陽明腑実に壅閉された大病であることが判断できる。すなわち即刻県医院での手術治療に護送するように意見したが、患者は手術を恐れたとえ死んでも行かない。家族全員にひたすら哀願され、急いで助けるための方法を講じる。余の家は1939年の日本による完全侵略時に、かつて村に避難した借りがある。また患者の健康だった素体を知っており、病は5日であるがまだ虚象は現れていない。ただ症状はすでに危急で、薬を取ってきて始めるには往復2時間もかかってしまう。そこで電話で処方を伝え山上の保健駅に大急ぎ薬を送り届けてくれるよう頼んだ:
  1.生白大根2.5kg、元明粉120g、上薬に水5000mlを加え、釜の中に同煎を置き、大根を3回に分けて入れ、一まとまりの煮熟を待って、取り出し再び一まとまりに換え、得られた汁を500mlまで濃縮し、採用に備える;
  2.二花(金銀花)240g、連翹・生薏以仁・赤芍・桃仁泥・厚朴・生檳榔・芙蓉叶・芦根各30g、冬瓜仁60g、生大黄45g(酒に15分浸して取った汁を薬に入れる)、牡丹皮・枳実各15g、皂角刺・炮甲珠・白芷・甘草各10g、広木香・沈香各3gのすった汁を混入(これは拙くも攻毒承気湯の加味方である)。
水を薬よりも2寸余分に加え、さらに白酒100mlを加えて40分間浸せば薬物の分解が加速し、然る後強火で10分間煎じ、むらなく混ぜて得られた1000mlの汁を取り、方1と混合し2時間毎に300mlを連続して服用させ通じがあれば中止する。
  3.まず舌下の金津・玉液・尺澤(双)・委中(双)を刺して、黒血を流す:闌尾・足三里・内関に捻転瀉方を提挿し、強刺留針する。待っていた薬を取り戻す頃には、すでに嘔吐は止み絞痛は軽減した。午後6時には順調に300mlを服用し終えた。2時間後腹中は絞痛し上下にゴロゴロと、絶え間なく雷鳴し頻繁にゲップや放屁をした。幸い三焦の気機昇降はすでに回復して、そこで一気に500mlを服用させると、患者は便意を催したので針を取り外したが便は出なかった、ただ痛脹は大きく緩和した。夜11時から再び300mlを服用させると夜半の2時になって、真っ黒い汚泥の様な極めて臭い硬い塊状が連なって、糞便の塊と膿血状の物を大きな便器一杯に下した。すぐに細麺を一杯捜して食べ(すでに2日間何も食べていない)ぐっすり寝入った。余は病人の家で一晩見守り、翌朝診察すると闌尾部の塊はすでに消えていたがまだ圧痛はある。舌上の黒苔はなくなり六脈もみな緩で落ち着き体温は37℃。《弁証奇聞》清腸飲の薏以仁を2倍と芙蓉叶・甲珠・皂角刺を加えて与え以って余邪を清くする:
  二花90g、当帰50g、地楡・麦門冬・元参・生薏以仁・芙蓉叶各30g、黄芩・甲珠・皂角刺・甘草各10gを3剤で癒える。
  闌尾炎は治療をしなかったことによって膿腫を形成し、それが酷くなって腸梗阻を合併するに至ったが、辺鄙な荒れ果てたところでしかも医者が不足し薬も少ない地区ではそれほど偶然ではなく見られる。この例は発症してから5日、ペニシリンを用いても効果なく症状は危急であった。もし闌尾に穿孔すれば容易に腹膜炎或いは膿毒敗血症を併発し、その腸梗阻ははなはだ厳しい。現代医学が認めた2つのうちもし見られるならその一つは保守療法以外の適応症である。但し余の一生でこれらの危機的重症は数え切れぬほどであるが、全部成功して一例の失敗もない。急症を上手に治す、これは中医学の特色の一つである。そしてまた効果が速く現れ費用も少なくて済む。この大症のように初めから終わりまで10時間足らずで、費用も数元以内であった。本例に用いた方剤:その一はすなわち《医学衷中参西録》の硝菔通結湯で、その軟堅潤下通便の効能は甚だ顕著であり、かつ正を傷つける弊害もなく虚弱者や老人の腸梗阻に用いて最もよろしい。その二はすなわち《金匱》の大黄牡丹皮湯に加味してできた攻毒承気湯、方中の特別多量に用いた瘡毒聖薬の金銀花は一切の大小瘍疽・腫毒悪瘡を善く治し、消腫排膿止痛の芙蓉叶と、更に薏以仁・冬瓜仁を加えた透膿散(甲珠皂角刺)は清熱解毒排膿する。並びに広木香・沈香の研磨汁を混入し、行気消脹・利水消腫の檳榔に硝菔湯を配し以って気滞を破れば、腑実は一掃し毒は便とともに排泄されて重病もたちどころに癒える。もし大柴胡湯と合方するなら多量の柴胡125gと金鈴子散(冲服)を加え、40分以内にできれば病勢を阻断し急性膵腺炎を止痛・消腫し、血象は基本的に正常に戻し患者の生命を救済するのに有効である。
                                       続く

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by sinsendou | 2012-01-16 20:13 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その44

今年一年いろいろお世話になった皆様への感謝と、来年が素晴らしい年になりますように願いを込めて今年最後のブログを立ち上げます。

年末・年始の休業は
12月31日から1月4日までとさせていただきます。

新年の営業は1月5日朝10時より開始、先着50名様に干支のご縁起を差し上げます。


李老中医 危急重症難病治療経験
その44

(四)蛮補致崩(無謀な補は崩漏となる)
  水泥工場女工馬艶芳30歳、1984年1月12日初診、元々“機能性出血”の疾患があり、外地の医者を求めて赴き、黄耆・当帰・阿膠・生竜骨・生牡蠣の大量処方を10剤連続して服用した。月経期になっても巡らず絞るような腹痛があり、次の日には暴崩となって一日で痰壺いっぱいの下血となった。三日後には変わって滴り落ちる不正出血が七日ほど続き、血色素6g、顔色は萎黄で艶がなく、自汗・喘ぎ・心悸や不眠、脈は反って洪数、124拍/分であった。血脱の脈は細弱なので大とはすなわち病が進んでいる証しであり、気に随って血脱に変わる恐れがあるので急いで固める:
  山茱茰肉100g、生黄耆30g、当帰15g、紅参10g、五霊脂5g(削って末にして呑服)、白芍15g、沈香・四炭(姜炭・三仙炭)、炙甘草各10g、麦門冬(小米と撹拌し炒める)・五味子各10g、生竜骨・生牡蠣・活磁石各30g、3剤。
  1月19日二回目の診察:出血は止まり汗が退き喘ぎも収まった。ただ折れんばかりの腰痛があるので、原方の薬剤を小さく制限して、それに腎四味各15g、胡桃4枚を加え以って封蔵の本を固める。3剤服用後諸症は悉く除かれる。善後方に価格の比較的安い鹿茸の基底部を一つ加え以って粉にして一月余り服用し根治が得られた。
  注釈:現れた血を止血するのは血証では大いに戒めねばならないが、これは医者が容易に犯しやすいよくある病である。血を治すは水を治すが如くでいちずに塞げば、補えば補うほどに瘀となり堤防が決壊するのは必至である。効果が現れるのは一時で遺された害はいつまでも続く。補中と疏導を兼ね帰経に引血することで癒える。血証の重要な点は脾胃にあり、脾が中気を主どり気は血の帥であるから血を統め升を主どる;胃は水殻の海であり冲任を統め、降を主どるので人身における気機の枢軸である。脾の升と胃の降によって血は常道を巡る。もし胃が和降を失えば、すなわち諸経はみな降の作用を得られず気逆して火となり、火性は炎上するので血熱妄行し血は上から溢れ吐衄の病となる。証は面赤や気粗、口苦舌苔黄、脈象数実として現れる。この時急いで旋覆花代赭石湯加炙枇杷叶30gを以って肺胃の気を降ろす。気が有余してたとえ火となっても、気が降りれば火も降りて血は自ら経に帰る。たった一味の苦寒でも清火してはならず、当然胃気を護り顧みることが必要である。脾気が上がらなければすなわち血は納まるところを失い下から出て崩漏便血の病となる。証は少気懶言や面色萎黄が現れ、甚だしいと蒼白で艶がなく脈は細弱が多く寸部は尤も弱い。急ぎ補中益気湯の人参と黄耆を多量に用い、下陥していれば挙げるようにその気を峻補し、四炭を加えて温経止血、紅参・霊脂を等量研末として呑服し益気止血化瘀する;下虚していれば補気升提を用いて必ず“提脱”を防ぎ、腎四味・生竜骨牡蠣を加えて腎気を固める。脾気が徐々に旺盛になれば自ら統血ができる。四炭は脾の不統血を治す要薬であり平淡の中に神奇の効果を秘め、不快症状に多くを試したがとても頼りにすることができる。もし出血量が多くて止まらずまた汗多く喘を伴うならば、それは肝気が既に傷つき疏泄太過となって血を蔵すことができなくなっているので、急いで山茱茰肉60g以上を加えて肝を収斂し救脱する。
  血証の初期には多く肝不蔵血や血熱妄行が見られる。証は血の上溢或いは下血で、その勢いは急かつ多量、面赤で気粗くイライラして怒りやすい、目眩と胸脇痛があり口苦く脈弦数などが現れる。丹梔逍遥散を以って肝の鬱を伸びやかにし、炙枇杷叶30gは清金制木;生地黄・阿膠は滋水涵木で涼血養血・柔肝止血し、代赭石は気を降ろして火を抑え、木を平らにする。肝の病を見たらまず先に脾を実とし、梔子の苦寒性を減じた炒炭で血に入った火を瀉とすれば止血できる。生姜を焼いた姜炭3gを以って胃気を護り、加えて三七粉6gを呑服して止血化瘀し瘀を留めない、これが血証に対する最上の妙薬である。もし喘汗が見られればすなわち既に虚と化しているので、速く収斂の山茱茰肉を加え以って肝の蔵血能力を回復させねばならない。止血と養血柔肝さらに滋水涵木を以って本治とする。七味都気丸は山茱茰肉が君薬で、それに枸杞子と三七粉を加え蜜丸にして服用する。肝臓の体は陰で用は陽、また“生命の萌芽”(張錫純)であり木はよく土を克するので、もし苦寒の攻伐を過用すればこの萌芽を損ない、すなわち虚となって脾は統血できずに病はなお一層深くなってしまうだろう。巧みに肝を整えることがすなわち血証の伝変を断ちきることができ、実に重要な一環である。血証は肝・脾の二経にあって処置を間違えると一層悪化が進み即ち損傷が腎にまで及び、腎の封蔵が失われると生命の本が動揺する。おおよそ三つの型に分けることができる:一つは火の不帰原であり、熱が上がって熏蒸、燃えるような急勢、酔ったような赤ら顔、白晴の充血、鼻衄、舌衄、口舌に生瘡、烏の様な赤目など、この実火は尤も急暴である。折れんばかりの腰痛や両膝の冷え、尿多く不渇を以って区別する。すなわち腎陰の不足が極まれば、竜雷の火の上奔を制御できなくなるので多量の引火湯で―――九地90g、塩巴戟肉・天門冬・麦門冬各30g、雲苓15g、五味子6gに加え、油桂3gの粗皮を去り研いで粉にし小米を蒸して柔らかくして小丸となし、薬の前に丸ごと呑みくだせば、無根の火を引くことで腎に帰しすなわち癒える。絶対に実火に苦寒や甘寒を誤っても投じてはならない、反すればすなわち亡陽厥脱したちまちのうちに変生となる、この様な誤診誤治は極めて多く証に臨んでは慎重が宜しい。二つは腎が軽症の不封蔵の場合、ただ僅かに腰痛や喘ぎ、自汗多尿不渇に注の様な出血が見られたら、急ぎ多量の補血湯に元気を助ける紅参を加え、山茱茰肉は90g以上重用し斂肝固腎して救脱する、加えて腎四味で腎気を鼓舞し生竜骨牡蠣で腎気を固摂、姜炭で温脾止血し、阿膠30g・三七粉小量3gで血脱の危機を挽回すれば癒すことができる。重症の場合には上の型が一緒に見られるほか、四肢が温まらないか四肢の厥冷、精神疲労や寝たがる、大汗や激しい喘息、呼吸微弱、脈沈遅微細、或いは反って数極まり無秩序で七急八敗、一分間に120拍以上の脈が現れ、気が血に随って脱し陰損が陽に及び、陽は殆ど絶えんばかりで生命の危機が近い。急いで拙くも破格救心湯をまねて投じ、以って安全を保つ。婦人科の血証は八脈を注意しながら、血肉有情の品である紫河車・鹿茸・亀鹿二膠を以って腎督脈を補い、冲任脈を滋養する。各型はどれも善後方を1~2カ月服用させれば、ほとんどが治療効果をしっかりできて一生犯されない。

                                          続く

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by sinsendou | 2011-12-29 10:51 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その43

李老中医 危急重症難病治療経験
その43

十七 鶏爪風症
  宋巧榮、女、26歳、物資公社幹部、1983年5月7日初診:産後9カ月、春の終わりに急に四肢の痺れを覚え、気力なく精神倦怠や折れんばかりの腰痛し、それは疲れや気候の変わり目に酷くなった。最近一カ月は痺れが早朝に起こり、手足が頻繁に鶏の爪の様に引きつった。内科の診断はCa欠乏性抽搐で、Caを補ったとしてもコントロール不能である。観察すれば顔色は萎黄で艶がなく、脈細舌淡。診断は産後の血虚で肝の栄養が失われたために攣急とし、加味耆桂五物湯を与え益気養血・補腎益精・柔肝緩急とする:
  生黄耆45g、当帰30g、白芍90g、桂枝・紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・腎四味各10g、黒木耳30g、 炙甘草10g、鮮生姜10片、大棗10枚、胡桃肉20g、7剤。
  5月15日二回目の診察:薬服用後精神は健旺となり顔色も紅潤、気虚倦怠や腰痛痺れも凡て治ったが、冷やすとまだ抽搐がおこる。詳しく病歴を尋ねると、患者は産後ひと月に満たないうちに野菜や衣類を冷水にて洗ったため、血分深く寒湿が入り正は虚となり邪を外達できなくなった。寒は収引を主どるゆえ経脈は攣縮する。さらに同気相引き内寒が久伏すればまた外感を感じやすくなり、両寒が相迫して症状は激しくなる。前方はかつて多くの鶏爪風を治してきたといっても、ただ本例の主証は変わっていて、故に僅かな効き目しか得られなかった。上薬は補益気血と滋養肝腎の剤であり、直接寒を取り除く効用はなかった。服用後わずかに体質改善になったが病根はほじくり出せず、故に寒に遇えば発症した。その上本例の寒は比較してみると表寒ではなく、つまり厥陰経・少陽経・少陰経に寒邪が深く入り込み、大辛大熱ではなく十二経の猛将でなければその任に堪えることができない。すなわち《金匱》烏頭湯の変方に滋養肝腎及び虫類の熄風の品を加えて治療を進める:
  生黄耆90g、当帰・白芍各45g、川烏頭30g、炙甘草60g、麻黄・桂枝・細辛各15g、腎四味・防風・黒小豆各30g、全蝎12只と蜈蚣4条は削って粉末とし冲服、蜂蜜150g、鮮生姜10大片、大棗10枚、核桃(打)4枚。
水2,500mlを加え弱火で煮て600mlを取り一日分とし3回に分けて服用して3剤。
  5月26日三回目の診察:川烏頭は劇毒があり、霊石境内ではかつて川烏頭を9g服用して3例の中毒が発生し、2例は余が救急に参加し危機を脱したが、1例は死亡した。どれも原因は配伍の不当で、煎煮の方法を指示通りにしなかったことによる。病を免れた患者は心中びくびくしているため、余は患者に対して親切に接し、煎薬の模範を示して病人が服用後安らかに眠りに入るのを待ってから、無事平安を祈りつつそうしてやっと帰途につく。上方を服用後諸症は悉く癒えたが、患者は将来また発症することを心配し又同じようにして6剤を連服した。合計9日で川烏頭270g以上を内服し、その症は根治することができ10年経っても再発していない。

十八、崩漏治療の私見
  (一)ペニシリン過敏後の崩漏
  水峪農婦張翠英、48歳、1984年11月16日初診:三日前ペニシリン過敏、急いで毫針を以って鼻尖素髎穴を刺し雀啄術を行った:内関提挿捻転約20秒、患者は覚醒し危機を脱した。(この方法で過敏症を20数例救治し、最も多くは1分間で危機を脱した)このような酷い急病を受けて驚き、呼吸が詰まって体に力が入らず起き上がることができない。前日ちょうど月経が始まりそれが暴崩となって止まらず、婦人科の救急をもっても治らなかったので余が診察を要請された。見れば患者の顔色は蒼白で気喘と自汗あり、食欲不振と目眩さらには身心動揺がある。月経血の色は鮮紅で血塊はなく、脈沈細弱、舌淡紅。これは驚則気乱と恐則気下によって脾胃の気が虚となり、下陥して摂血ができなくなったので、陥なる者は挙とする:
  生黄耆60g、当帰20g、煅竜骨・煅牡蠣・朱茯神各30g、山茱茰肉60g、姜炭・三仙炭・紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・霊脂・炙甘草各10g、柴胡・升麻各6g、鮮生姜5片、大棗6枚、3剤。
  11月9日二回目の診察:血は止まり脈も起き上がって食欲も出てきたが弱い頭痛が止まらない、これは血脱による気陥で血が上栄されないためで、補中益気湯を3剤与え治癒した。
  (二)暴崩欲脱
  豪子頭村老七の妻、46歳、1983年6月13日、暴崩による受診。その家に行ってみると患者は壁にもたれる様にして横たわり、顔色は青ざめて白く喘ぎ、汗をかき心悸し四肢は冷たく話すことさえもできない。脈を診ると右空大、左沈弦、舌淡。暴崩のあと気が血に随って脱し陰損が陽にまで及んでいて、急いで固摂をするため破格救心湯の普通量を与える:
  山茱茰肉120g、紅参30g、煅竜骨・煅牡蠣・活磁石・附子各30g、姜炭30g、炙甘草60g、急いで煎じ頻繁に呑ませ約1時間後に漸く危機を脱した。訊けば患者は去年ケガをした子を悲しみ、その時丁度月経期で悲しみと心配の思いで、食欲減退し月経は乱れ不正出血が止まらず、10か月の長きに達した。婦人科の診断は更年期の機能性出血であった。切ない悲しみは肺を傷つけ心配な思いは脾を傷つけ、脾と肺が傷つけば中気はもの寂しくなり統摂を主どれない。長い間治療を怠るとその災いは八脈に及ぶ。さらに五臓を傷つけ最後には必ず腎にまで及ぶ。腎の封蔵機能が失われ、故にすぐに崩漏大下となって腰痛し寝返りもうてなくなる。年も五十歳に近く天癸が将に涸渇するところである。崩漏を治す方法は傳氏の女科にある安老湯一方で、中気を峻補して肝腎を滋培する、当に証に対し帰属する。ただ八脈を損傷して気虚下陥し抜けおちんばかりなので、ぴたりと合うわけではない。《医学衷中参正録》を参照し固冲止崩湯の意で合方加減し治療を進める:
  生黄耆・九地・紅参・当帰・山茱茰肉・煅竜骨・煅牡蠣各30g、烏賊骨24g、茜草炭10g、柴胡・升麻・炙甘草各10g、三七6gと五倍子1.5gを粉末にして冲服、阿膠15g(化入)、塩補骨脂30g、胡桃4枚、3剤。
  6月21日に老七が来て、出血は全て止まり精神も食欲もどちらも良くなり、腰痛も大幅に好転したと告げた。気血を補って腎気を固め冲任を治める様に調整する:
  生黄耆30g、当帰15g、腎四味・山茱茰肉・三仙炭各10g、姜炭5g、紅参10g(別に弱火でゆっくり煮る)、阿膠15g(溶解)、炙甘草10g、烏賊骨15g、茜草6g、亀鹿膠各10g(化入)。
上方を連続して5剤服用後当初の健康を取り戻し、7年後訪れるも病気せず健康であった。
  (三)暴崩脱症
  鉄工場家族王季娥42歳、1973年9月10日午後突然暴崩の危機に瀕し便器にかなり多量の出血があり、息も絶え絶えで四肢は厥冷し、六脈はすべて無い。工場医が止血強心の注射をしたが無効で、今なお出血が止まらず寝具は乱雑に取り乱れている。元々医院に送るつもりで救急したが少しでも動かすと更に甚だしく出血した。血脱からの亡陽と治法を定め、破格救心湯合当帰補血湯を以って治と為す:
  山茱茰肉120g、附子100g、姜炭50g、炙甘草60g、煅竜骨・煅牡蠣各・紅参各30g(搗いて末にして同時に煎じる)、生黄耆60g、当帰30g、本人の頭髪炭6g(冲)、煎じた先から呑ませながら大きな艾柱灸を神闕に据える。3時30分に血は止まり厥回脈が漸く出て、黄昏時には話すことができるようになって、夜1時には蓮根の葛餅やカステラを欲しがるようになって、危機を脱した。その後多量の補血湯に紅参・山茱茰肉・竜眼肉・腎四味・亀鹿二膠を加えたものを7剤連続して服用し起き上がれるようになり、紅参・霊脂・三七・琥珀・紫河車・烏賊骨・茜草炭・腎四味を以って、これらを粉にして40日服用し健康が回復し始め、現在も健在で今年70歳になる。
                                      続く

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by sinsendou | 2011-12-17 15:03 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その42

李老中医 危急重症難病治療経験
その42

十四、乳腺の嚢性増生症
  婦人科転院してきた患者耿玉蘭、18歳、右乳下方に3か月前からほぼ杏の種の大きさの塊が発現し、遂には少しずつ大きくなって鶏卵大にまでなり、表面は光沢があり境界は綺麗で可動するが粘りつきはない。婦人科の診断は乳腺増症で、中医学治療を請われた。
  1984年1月9日初診:症状は上記の様で、患者の性質は愚直で笑いながら云うようなごまかしはなく、愛が胸に鬱積した怒りを生じた。3か月前ちょうど月経時に乱暴を受け、気を病んで遂には月経が止まってしまった。それからすぐに左乳に隠痛・閉脹を覚え、肋骨はのびやかでなく痰も多く、段々と長い塊になった。かつて逍遥丸を6合服用させたが無効。脈沈滑で有力、苔白膩。証は気滞血瘀と痰気交阻に属す。疎肝化瘀、軟堅散結を与える:
  漂海藻、生甘草各15g、柴胡・白芥子各10g(炒って削る)、夏枯草・牡蠣粉・炒王不留行・丹参・木鱉子各30g、桃仁・紅花・澤蘭叶・六路通各10g、全虫12只と蜈蚣2条は研末にして冲服、鮮生姜5片、大棗6枚を7剤。
  1月21日二回目の診察、上方を服用後乳部に虫が這うような感じがして、第4剤を服用し終わると月経が通じ、甚だ多くの黒い血塊が下った。月経期にまた3剤服用させると、塊は消えて月経血は綺麗になった。
  注釈:上方は余が60年代中期に自創した攻癌奪命湯の加減方で、一切の気滞・血瘀・痰凝による全身各部の腫れ物を治すことができるし、頚部リンパ結核・甲状腺嚢腺瘤・乳腺増生・包塊型腹膜炎・風湿性結節・脂肪瘤(痰核)にもよい。もし陰寒凝聚に属するならば肉桂・細辛を加える:堅積難消ならば生水蛭3g、炮甲珠6gを研末にして冲服する。殆どは7剤で直ぐに消えるが、痼疾は20剤で癒すことができる。方中海藻・甘草は等分にして相反相激し、全虫・蜈蚣・水蛭・炮甲珠を以って入絡捜剔し病所へ直に達する。夏枯草・牡蠣粉・王不留行は散結軟堅し、白芥子は皮裏膜外の痰を去り、木鱉子は甘温微苦で小毒があるが消腫散結作用があり毒を取り除く要薬で、一切の瘍腫・瘡毒・瘰癧・痔瘡を治す。余はこの薬を40数年用いているが中毒になった者を見たことがない。柴胡の肝経入引を以って気鬱を疏解し、もろもろの活血薬は消積を化痰する。諸薬相合すれば気通・血活・痰消し、その症は自然と癒える。

十五、産後燥便による肛裂出血
  燕志華、女、32歳。産後3か月便が乾燥し羊糞球の如くで、排便毎に肛門は裂け出血する。長引かせたので気虚精神倦怠し顔色は萎黄、舌淡唇白、脈細寸微、血色素8g、これらは脾の不統血の現象である。そこで腸風便毒の剤を用いて治療したら反って自汗・心悸・昏眩となった。本は産後の血虚による濡潤喪失に属し、まさに黄土湯を用いて温めねばならぬところ、今誤薬で脾陽を損傷してしまった。古人の経験では、多量の白朮120gを用いれば反って滋液潤便の効果があり、また脾は散精を主どるの意味がある。
  紅参(別に弱火でゆっくり煮る)、炙甘草各10g、生地黄30g、白朮120g、阿膠25g(化入)、附子10g、黄芩炭10g、灶心土120g、3剤で癒える。

十六、乳衄二則
(一)
  劉秀芝、女、34歳、蔬菜会社家族。1983年12月21日初診:両乳房が閉張隠痛して半年以上、徐々に乳頭の内陥と乳房の委縮が現れた。乳房を絞ると粘稠な臭い黄汁と鮮血が溢出した。最近は悪臭の黒血になり、それが毎回一枚の毛布にひたり湿ってしまう。さらに肋骨脹痛や黄臭のある帯下が多く現れた。かつて省医院へ行き検査したが確定診断ができずに、両乳の切除手術を意見されたが、切除を免れた後患っていた。患者は県に帰り余を招き治す相談をした。聞いて判ったことは、病が長期にわたる気の悩みから由来して脈を診ると弦であった。七情による内傷は肝の疏泄を失い、五志の過極は化火・化毒となる。疎肝解鬱、通絡化瘀、化湿解毒にて治となす:
  柴胡15g、当帰・芍薬・茯苓・白朮隔0g、牡丹皮15g、山梔子10g、酒炒竜胆草10g、生薏以仁30g、蒼朮・黄柏・川牛膝・桔絡・炮甲珠・六路通・甘草各10g、漏芦12g、蒲公英90g、連翹・王不留行各30g、貫衆炭5g、三七10gを研末にして冲服、車前子10g(包)。
鮮生姜10片、大棗10枚、10剤。
  1984年2月14日、その夫が子供の夜尿症の診療に来た。云うところによると、上薬を7剤服用して出血は止まり帯下も減った。10剤全部服用し諸症はことごとく除かれ、かつ乳頭の内陥と両乳の委縮もまた漸く形よく膨らみ、1986年の夏に子供が生まれた。
(二)
  劉風雲、女、44歳、水頭市民。1983年6月22日初診:乳衄が2カ月余り、胸に鬱積した怒りが暫くして両肋骨隠痛と右乳に胡桃大の結核を生じ、乳頭から鮮血が溢出した。毎回の月経期は必ず頭眩と泛嘔と黒い多くの塊ある出血。常に一筋の熱流が右脇下の章門穴から乳房の涌来に向かって流れる感覚があり、直ぐに針で刺すような灼痛と、それにつれて同時に鮮血の溢出と爆熱自汗があり、左側もまた同じ感覚がある。毎月月経は2回、月経量が少ない時は乳頭の出血は必ず多い。舌紅無苔口苦、脈沈弦そして数。
脈と証を合参すると、必ず七情内傷であり肝気が久しく鬱して化火となった。肝の経絡は胸脇を纏っていて乳頭は肝に属し乳房は胃に属す。肝気横逆は必ず先に胃を犯す。今朝に動気が現れれば病必ず発作を起こす、これは明らかに木強侮土である。疏泄が多過ぎれば肝は蔵血できない:脾胃が弱過ぎれば血を統摂できない。これがすなわち出血の原因である。治法は肺胃の陰を養い、清金制木して胃の囲いを解きながら肝の体であるその収斂作用を和らげる。
  醋柴胡10g、当帰・白芍・生地黄・石斛・沙参・枸杞子・山茱茰肉・烏梅各30g、麦門冬15g、川楝子10g、三仙炭各12g、牡丹皮・黒山梔子・炙甘草各10g、3剤。
  7月2日二回目の診察:薬服用後血塊は消え出血は止んだが、少腹が妊娠の様に脹れ始めたというので、診てみると鼓の様に突き出ていた。精神倦怠・腰痛で膝が冷え、舌暗紅無苔、脈沈、右寸極めて弱。初診で患者に口苦舌紅が見られたので、多量の養胃湯の甘寒や丹梔の苦寒を用いたために中下焦の陽気を損ない、中気は随って下陥したのでこの病変を起こした、医者の罪なり!情志の火は実火と同じではなく、疏や降に宜しく(気を降ろせば火も降りるなり)、清は宜しくない。且つ前賢の曹炳章氏は“舌紅非常並非火”と謂っている。“非常”の二字は当に十二分に細かく咀嚼せねばならない。凡てに見られる舌色の鮮紅或いは嫩紅は、みな気血虚寒に因って陽が上に浮いたのであり、同類に“面赤如妝(化粧した女の様に赤い顔)”の仮熱に誤って清熱瀉火を用いればすなわち危険である。証に臨んで極めて注意する必要がある。そこで大量の補中益気湯を改めて投与して下陥を升提し、さらに温養腎命の腎四味を加える:
  生黄耆60g、当帰・白朮各20g、紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・霊脂・炙甘草・三仙炭・柴胡・升麻・桔梗各10g、陳皮3g、腎四味120g、鮮生姜10片、大棗10枚、胡桃4枚(打)。
  9月30日偶然街で患者と出会い訊くと、二診の方剤を連続して9剤服用して腰痛や月経不順もすっかり治り3カ月になるという。
  12月13日三回目の診察:上記症状はすでに癒えたが、最近イライラして月経前に両乳熱感や歯茎からの出血・鼻血・目眩・足膝の冷えなどが現れ、脈沈細で不渇、舌嫩紅無苔。倒経血逆上行が現れたといえども、その原因を究めればすなわち腎陰虚極に関係し、龍火不蔵である。引火起原法を与える:
九地90g、塩巴戟天肉・麦門冬・天門冬各30g、雲苓15g、五味子6g、油桂2g(米丸とし呑服)、5剤後諸症みな癒えた。                                                

                                      続く

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by sinsendou | 2011-12-09 12:27 | 中医火神派①~50

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その41

李老中医 危急重症難病治療経験
その41

十一、産後に誤用した開破による変病
  張秀珍、女、30歳、鉄工場家族。1987年10月12日初診。三月下旬二度目の妊娠で一人の女の子を産んだが、心の中は抑鬱で不快、また差別を受け悲怒交錯して加わり、食欲不振・自汗・胸悶・喘急が暫く続いた。瓜楼枳実半夏湯を服したところ喘ぎで歩くこともできなくなり、更に不眠・心悸が増して身心が動揺した。安易に医者は養血帰脾・補心安神を20剤余り服用させたが無効なだけでなく、寒熱往来や全身皮膚麻木、折れんばかりの腰痛と臍下の動悸、甚だしい時には気が上攻した。少腹は閉脹してまるで妊娠しているように鼓腸し、顔色は蒼白で艶なく、脈の上は寸にまで達せず下は尺にまで及ばず、舌淡紅少苔。この症は情志の病変があるといえども結局は、産後の気血大虚で衛外の固摂を失ったため自汗が半月も止まらなかった。続けて現れた少食・胸悶や喘などのその本は、肺気虚により輸布の失調や中気虚による運化の失調、さらに腎気虚による納気の不能に属し、いたずらに開胸破気を用いたため気虚が極まり下陥となってしまった。故に上に現れれば息切れが続き、下に現れれば少腹が妊娠の様に張れる。時が経てば肝虚となり収斂失調し、腎気の固摂を失い冲脈は下焦を守れず時々上奔する。心腎の交済ができないため不眠動悸や身心が動揺する。五臓が同時に虚となるので、肺は皮毛を主どるため全身の肌膚は痺れる:肝の疏泄が太過となるので寒熱自汗となる:腎元が消耗するので折れんばかりの腰痛となる。補気升陥と定め斂肝固腎を急とする:
  生黄耆45g、知母20g、柴胡・升麻・桔梗各6g、紅参10g(打ち砕き小さな塊にして呑む)、山茱茰肉90g、腎四味120g、生竜骨・牡蠣各30g、炙甘草10gを3剤。
  10月15日二回目の診察では、不眠と痺れを除いて諸症状はすべて治った。なお臍下の動悸不安を感じるのに、紫石英・活磁石を加えて固鎮冲脈し上下を程よく治め、当帰で養血和血して3剤服用後ようやく癒えた。

十二、月経痛の痼疾
  馬金枝、女、25歳、結婚後5年不妊。彼女は月経痛を患い多くの医者に診てもらい、服用した薬は数百剤にのぼるが無効であった。その症は月経の3日前から少腹が墜脹絞痛し始め、日一日と甚だしくなり寝床を転げ回り、冷や汗でびっしょりとなり四肢は氷の様に冷たくなって頭痛と生唾を吐き、とてもひどい大病を患っているかようで月経4日目になって楽になる。月経量は少なく色黒で塊が多い。顔色は黒暗で眼の周囲・山根・唇の色も黒い。脈沈緊指を打つほどで、舌の辺尖は瘀斑で満ちていた。証は寒凝胞宮に属し、寒は収引を主どるので通じざれば即ち痛む。かつ病程はすでに10年以上経過し病は血絡深くに入り、既に痼疾となっているので癒えにくい。当帰四逆加呉茱茰生姜湯合少腹逐瘀湯を加減し、開冰解凝・逐瘀通経する:
  当帰45g、炙甘草・赤芍各30g、肉桂・細辛・呉茱茰(洗)各15g、通草・川芎・没薬・炮姜各10g、桃仁 20g(研)、紅花・土元(シャ虫)、炒小茴香各10g、失笑散20g(包)、柴胡15g、丹参30g、炮甲珠6g(研磨し末にして黄酒にて冲服)、鮮生姜10大片、大棗12枚。
上薬を月経前3剤服用し、月経の前兆が現れたら直ぐに3剤を連続して服用し、それを2カ月連続して服用する。
  1980年1月3日二回目の診察:二か月合計上薬12剤を服用し、今月の月経は順調で黒塊屑を甚だ多く下し月経痛は半分ほどに減った。翌月月経前の痛みは止み、月経に臨んで張痛は軽微で耐えられるほどになった。その時の診察では顔色は紅潤光沢があり、山根・唇の黒色はどちらも消えていた。ただ歯茎の隅が薄黒く見え:折れんばかりの腰痛で立ち座りに耐えられない、脈中取では緩で舌上に瘀斑の淡い痕が少しある。原方の桃仁を減じて10gとし、腎四味120gを加え毎月の月経が始まったら3~5剤連続して服用し、月経が終われば停薬するようにして連続2カ月服用する。
  翌年の春、路でばったりその祖母と会って、上薬を10剤服用後には全て良くなり現在妊娠中であると知った。

十三、寒症の盆腔炎
  耿淑珍、女、33歳、草橋村農婦。1983年8月27日初診。少腹の両側が痛み拒按、黄帯下が流れ汚臭がする。婦人科検査では子宮前屈、生化学検査:白血球19500、中性球80。診断は慢性盆腔炎の急性感染症で、中医診療に転院し治療。
  診察では脈遅細、58拍/分、舌淡胖水滑。胃中から酸腐様を吐き腰膝は冷痛し、精神疲労と嗜睡して顔色は化粧しているように嫩紅。婦人科の診断は急性盆腔感染とあったが、患者の症状は異なり中上の気化無権だけでなく、浮陽飛越して載陽の危険な症が現れている。もしみだりに清熱利湿の剤を用いればたちまちの間におかしくなるのを免れ得ない。少腹逐瘀湯合四逆湯加党参・雲苓・澤瀉・鶏冠花各30g、附子15g、油桂3g(研磨し粉を冲服)、浮遊した火を元に帰す引火帰原で、3剤。
  9月14日二回目の診察:上薬3剤服用して化粧をしたような赤味は消え腹痛も止み、帯下は減り食欲も出て、両目に力が戻り話す声もはっきりして、脈は滑数、94拍/分。正気が戻ってきたので薬性が平の清熱解毒薬・蒲公英60gを加えて清化する。
  11月14日に患者は幼子を連れて腹瀉の治療にやってきたので、以前の病を尋ねてみると二度目の診察の処方を服薬後すっかり治って、野良仕事の繁忙期と家事労働に十分耐えることができたという。

  注釈:炎症に対しての治療は当に人によって異なる。“炎”の字を火の上に火が加わると理解してはいけないし、血液検査値が高いことを自分勝手に判断し苦寒攻瀉を用いてはならない。体質稟賦の差異によって血液検査値が高いといえども、証が虚寒に属する者も少なくない。この農婦は8人家族で子供6人、労働力少なく生活困窮し労倦内傷により病気となったから、正気が先に虚となり、故に寒化・虚化が多い。《金鑑》外科に“膏梁は営衛を過剰に変え、粗末は体の気血を貧しくする”とある。古代中医はすでに疾病の個体特異性を認識していた。権力のある官僚や大金持ちの商人と困窮する人民とでは、同じような病を患うにしても病機転帰が明らかに同じではない。前者は膏梁濃味の肥った羊や美味しい酒を欲しいだけ食べ、無病のところに補を進めると必然的に営衛壅塞となり、病は化熱化毒が多くなってその患う瘍疽には攻や瀉が宜しい:後者は満ち足りた食事もできず身に纏う衣類も十分でなく、糠を呑み菜食するだけなので、労倦が内を傷つけ正気が先に虚となり病邪が内陥しやすく、凡そ患う瘍疽は補托が当てはまり、少なくとも攻伐を用いることは慎みが必要で、脾胃の保護を以って第一に必要なことである。即ち適度な攻をする時も同様に、病に当たれば直ぐに止め正気を傷つけてはならない。
  中医の“証”はすなわち疾病における主要矛盾の集中点で、内在する素因の“人体形気盛衰”を包括したもの。“証”に対して薬を使い“証”が解ければすなわち病は除かれ、一切が何の障害もなくすらすらと解決する。中西医結合の現状から見ると、ある幾つかの地方ではなお西医診断をして中医の薬を用いている。現代医学の確定診断された病に対して、中医はただ良馬を探し求める計画の通りに、番号通りに座席に着かせれば万事好都合なのである、故に度々失敗してしまう。中西結合させ“労せず成果を受ける”ことは絶対にできない。西医確定診断の病に対して中医は独立思考が必要で、真相がはっきりせず対応策がとりにくいことを根掘り葉掘り追求して深く分析解明する、この様な才能は中医の特色を体現し、“人”の情・病機をうまい具合に合わせて治療効果引き上げている。
                                       続く

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by sinsendou | 2011-11-30 11:22 | 中医火神派①~50



「抗老化」いつまでも若くありたい。それを実現する漢方薬が「鹿茸大補湯」です。    3月からは、毎週日曜日を定休日とさせていただきます。

by sinsendou
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