人気ブログランキング | 話題のタグを見る

いきいき元気! 感謝!

中医火神派医案新選  その19

中医火神派医案新選
その19


24.飲癖――蒼朮丸
  王某、男、42歳。濃いお茶を好んで飲み、飲んでは清水を吐き、毎回甚だ多く吐くことがもう10数年の長きに達している。中医は反胃の治療を施し、四逆湯等の加減方及び丁香・乾姜・附子・呉茱茰を以って温運法を用いたが、あまり効果が見られなかった。方を改め五苓散・胃苓湯の建碑利水もまた無効だった。毎年夏季になると最も激しくなるので、すなわちわざわざ昆明まで治療に来る:
  脈弦滑、舌苔厚膩、顔色は暗い黄色、胃脘満悶、食少。脈証を合参しての診断は飲癖である。徐霊胎の香砂胃苓湯加高良姜を以って処方し、服用後その病は以前の如くである。原因を考えるとこの証に温運或は健胃利水の剤を与え、欠点があるがとるべき点もあり、それでどうして効かなかったのか?はっと悟るがこの病歴十数年の長きにわたり脾虚がその本であり、飲聚はその標であった。《内経》には“よく標本を知れば、万挙あっても万当たる”と云っている。本を治すには健脾燥湿から手を入れねばならず、脾が健やかになれば自ら湿は運ばれ、飲はどうして生じようか!すなわち飲癖の蒼朮丸を専治として与えるが、今回は多量の湯薬とする:
  蒼朮60g、大棗12枚。日に1剤服用を云いつける。方中蒼朮は苦温で燥湿健脾できる。《名医別録》ではよく“消痰水”と謂われる;大棗は甘温で脾胃を補益する。二薬は相合して補散を兼施し、剛と柔でともに役に立つ。蒼朮の散は大棗の補を得て、散じ過ぎないという役になる;大棗の補は蒼朮の散を得て、壅滞の弊害をなくすように調える。調剤が的確であれば脾胃にとって大変有益であり、故に多く服用しても害はない。
患者は20剤連続して服用し、吐水は半減した。なお原方を守りそれに脾の力を助ける灶心土30gを加える。再び20剤服用し病は遂に癒えた。即ち患者には濃いお茶を少しだけ飲むほうが良いと告げた。治癒後に経過観察を半年、未だに再発していない。この方は反胃吐酸等の症を治すのに用いて治療効果は良い。

  評注:この案はかなり珍しい飲癖で当に陰証に属し、正治と称される姜附・四逆や五苓散・胃苓湯の利水などを用い誤りではないが、どれも無効であった。専ら飲癖を治す蒼朮丸を投じることで終には良効を収めた。例え姜・附でも陰証をすっかり治すことができないと知る。考証すると蒼朮丸の出自は《類証治裁》で、蒼朮一味は粉末とし大棗肉は丸として、飲癖や嘔酸曹雑さらに心が飢えた如くなどを治す。本案を選び一つの参考に供する。

25.寒凝発顎――封髄丹加呉茱茰・肉桂
  陳某、女、25歳。入院中の某医院の診断は腮腺炎で、夏枯草等の薬物及びストレプトマイシン等を用いたが無効であった。そこで余が診療を請われた:左耳下腫れてはいるが皮膚の色は赤くなく、触れても熱なく飲を欲せず。舌質は青滑、脈沈緩。これは肝寒木欝に因って陰寒の邪が少陽経脈に凝滞することによりこの証を形成するにいたった。封髄丹加味を与える:
  焦黄柏9g、砂仁6g、甘草6g、呉茱茰6g、肉桂6g。
  本方は陰陽交通を目的とし、黄柏・甘草の苦甘化陰、砂仁・甘草の辛甘化陽、これに呉茱茰・肉桂の温肝・散寒・解凝を以って合わせた。このように陰陽の交通が得られれば、肝胆の気機も昇降を得られる。連続して2剤服用し腫勢すでに減じた。再度2剤服用させ病は全て癒えた。

  附:熱毒発顎――銀花甘草湯加味
高某、男、10歳。患者は発熱し両耳垂下部が腫大疼痛、西医診断は腮腺炎で西薬を用いて治療したが、すでに十数日になり余が往診を請われた。症状を診ると口を広げるのが困難で、飲食も飲み込めず便秘し、舌紫、両脈弦数。脈証合参すると風熱の毒を感受し、熱毒が顎部に壅結し病が少陽・陽明の両経にある。銀花甘草湯加味を用いる:
  金銀花9g、甘草6g、紫草6g、黒豆15g、緑豆15g。この方はすなわち軽揚の剤で、効能は清熱解毒、涼血養肝で、熱毒を外散に導引する。
  上方2剤服用し、熱は退き腫勢も大方消えて、疼痛は比較的緩んで口も開けられるようになった。原方に紫花地丁9g、夏枯草9gを加え、以って清熱解毒・清肝散結の力を増強すると、2剤服用し直ぐに癒えた。
  この案は陽経に熱結しているので苦寒を多く用い過ぎないよう、熱毒内陥や他変を生じることを防ぎながら因勢利導の涼散を与える。

  注釈:以上2例は発顎(腮腺炎)で一つは寒一つは熱、寒の方はみな“陰象”・“陰色”が現れ、熱の方はみな“火形”・“熱象”が現れていて対比が役に立つ。その中の寒凝発顎は清肝及び消炎を用いてなかなか治らず、症を見ると腫れたところは赤くなく熱もない、さらに飲み物を欲しがらず舌質が青滑、脈は沈などの寒象から陰証であると断定し、陰陽交通を以って気機を調和し治癒した。経過した症候の病機を分析し同病でも治法が異なり、二例はどちらも全快の目的を達した。
                                続く



下記のインタレストマッチ広告は当ブログとは何の関係もございません。
by sinsendou | 2012-07-29 00:39 | 中医火神派医案新選①~
<< 麗しの島 台湾旅行記 194 ... 中医火神派医案新選  その18 >>



「抗老化」いつまでも若くありたい。それを実現する漢方薬が「鹿茸大補湯」です。   毎週日曜日を定休日とさせていただきます。

by sinsendou
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
神仙堂薬局 リンク集
カテゴリ
全体
今注目の話題
漢方
お客様のお喜びの声
季節の養生
病気にならない秘訣①~
店頭にて
がん①~
免疫①~
免疫パワーを高める養生法①~⑦
花粉症対策①~⑥
目のかゆみ①~⑤
鼻水・鼻汁①~⑦
中医学のかぜ治療法①~③
風邪①~
のどの痛み①~⑦
なかなか治らない咳の漢方①~⑮
気管支喘息①~21
たかがニキビされどニキビ①~⑤
アトピー・皮膚病①~⑱
蕁麻疹①~⑯
皮膚掻痒症①~⑥
掌蹠膿疱症①~⑦
こころの病①~⑮
高血圧①~⑨
慢性疲労①~⑲
不眠症①~⑪
めまい①~⑫
耳鳴り①~⑳
頭痛①~⑫
肩こり①~⑤
胸の痛みと心臓病①~⑮
胃腸病 ①~⑰
食欲不振①~⑬
胃の痛み①~⑱
胃のつかえ①~⑬
腹痛①~⑬
便秘①~⑧
身近な病気 下痢①~⑨
腰痛①~25
ひざの痛み①~⑪
痛風①~③
肥満①~④
腎の働きと病気①~⑱
こじらせると厄介な膀胱炎①~⑩
頻尿①~⑩
排尿困難①~⑦
相談しにくい夜尿症①~⑥
冷え性①~⑨
不妊①~⑧
子宝の知恵 ①~⑯
月経痛①~⑦
月経不順①~⑲
更年期障害①~⑮
からだと健康①~
中医火神派①~50
中医火神派医案新選①~
麗しの島 台湾①~487
北海道の旅①~40
京都の旅①~74
神戸の旅①~⑯
西九州浪漫紀行①~⑳
沖縄の旅①~40
ハワイ旅行①~45
大塚国際美術館
ぶらり横浜 ①~
鎌倉散歩①~⑬
青背魚精
深海鮫スクアレン
深海鮫スクアレンプラスDHA&EPA
養脳精
スーパーナットーゲン
プラゲンΣ 胎盤素
スーパー酵素113
おすすめの本①~
我が家の人気者①~
その他
以前の記事
フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧